『夢か?幻か! ビッチュマン参上!!』

注)この物語は原作者の文章をそのまま掲載しています。お子様にわかりやすく読んで説明してあげてください。



  人は誰でも、笑顔で暮らすことを望んでいる。

しかし、心の奥底に潜む邪悪な欲望が実体化し、活動を始めた。



 あるビルの一室。ソファーにふんぞり返り、たばこをふかしている男。
その顔はマスクに隠れ、表情はわからない。
(わしの一声で全世界が思い通りに動けば、これほど楽しいことはない。ハーハハハ…)
… 男は、ゆっくりと立ち上がると窓のブラインドの隙間から高梁の町を眺めた。

 黒装束の男、壺を逆さにし、小銭を数えている。
 (世の中金じゃ。金さえありゃあ、何でも手に入るんじゃ。ヒーヒヒヒ…)
… 腹を抱えて笑った。

 武家屋敷の外、銀マスクの男が覗き込んでいる。
 (見ぃーつけた、庭付一戸建。しかし、プールがないのは、ちと、残念じゃのぉ。フーフフフ…)
… 泳ぐように去っていく。

 鏡の前で、念入りに化粧をする仮面の男。
 (これよ!これ! この輝きこそあたしにふさわしいわ。ホーホホホ…)
… 鏡に映る姿にうっとりし、不気味に微笑む。

 ある食堂の前、きれいに並べられたサンプルを指しながら
(うまそうだな、うっまそうだな、うっまそうだな、あ〜ぁ、腹一杯喰いてぇ〜。
 おっと、よだれが、おっと、よだれが…。へーへへへ…)
… 口のまわりを拭う。





 高梁川河原で清掃活動をする高梁市青年経済協議会の会員たち。

一人の会員が立ち上がり、腰をたたき、大きくのびをしながら、
 「疲れたぁ〜。そろそろ休憩しようやぁ。」
と、後ろの会員をたばこに誘う。肩をたたかれた会員は、灰皿の代わりにちり取りを持って来て、
 「ひと休み、ひと休みっと…。」
しゃがみ込む。

 川を眺める二人の背後に近づいたメガネの男は、一人の男の肩に手をやり、突然話し始める。

 「今から約350年程前、備中松山藩主水谷伊勢守勝隆が、城下の繁栄を願って高梁川上流
  開発に着手したらしいけど、その時は、草刈り機もなかったから大変じゃったろうなぁ。」

それを聞いた会員は、立ち上がり言う。
 「そりゃそうじゃ。わしらの何倍も苦労しとったで…。」

もう一人の会員は、しんみりと…

 「しんどくて、辛くて、落とした涙が高梁川を流れとったんじゃろうなぁ。」

そう言って、流れを見つめ、小石を川に落とす。メガネの男が、

 「高梁川を流れる涙かぁ…」

そうつぶやいて、会員が投げた小石の方に目をやると、

 「ありゃ、何じゃ?」

川底から何かを拾い上げた。拳の上で輝く紫紺の玉。それを見つめる会員たち。
 「何? なに? ビー玉か。」

その言葉に、

 「ひょっとして、お宝かも?」

と、期待を持たせる。メガネの男は、

 「お宝!? そうだといいなぁ。じゃ、拾ったのは俺だから…。」

少し笑顔で、ポケットにしまい込む。

 「ビー玉拾ったくらいで喜ぶなよ。」

 「ただのビー玉じゃないかもよ。何でも願いがかなう秘宝…なんて考えるとワクワクする。」

 「ハハッ…、まるで子供だな。」

 二人の会話に、

 「青経協は、子供に夢を与える団体だから、夢見る会員がいても、いいんじゃないかな。」

と、最初に期待を持たせるようなことを言った会員が言う。それを聞いて、

 「そうだな。じゃあ、高梁川がきれいになるように、お願いしてもらおうか。ハハッ…。」

メガネの男の肩をたたき立ち去る。もう一人も、

 「そういうことで、作業に戻りますか。」

と、草刈・清掃作業を再開する。一人残されたメガネの男は、ポケットからそっと玉を取り出しつぶやいた。

 「みんなが笑顔で暮らせますように。」




 …そのようすを向こう岸から見つめる男がいた。

 「この時代にも、ふるさとを愛する青年がいた。私も君たちと共に活動しよう。」

黙々と作業を続ける会員たち。少し離れて草刈り機をあやつる男、彼こそがこの物語の
主人公『ビッチュマン』である。






 怪しい5人の男たちが土手に現れる。その中で一人衣装の違う男(ジョーカー)が口を開いた。

 「われらの邪心帝国を実現するには、手足となって働く人間が必要だ。下を見ろ、奴らなら利用
  価値は十分ある。行け! 行ってわれらに服従させるのだ。」

 「おぉー!」

奇声を発しながら、土手を駆けおりる4人の黒装束。その後をゆっくりとおりるジョーカー。
青経協会員の前に並んだ邪心党。ジョーカーが笑う。

 「ハーハハハ…」

その笑い声にムッとして、

 「なんじゃ、おめぇらは?」

と、問う。すると、邪心エースが、

 「ヒーヒヒヒ…、われら邪心党!」

右手を突き上げ、答える。もう一人の会員が、

 「じゃしんとう?」

と、怪訝そうに聞き返せば、邪心キングが言う。

 「邪心党がこの地を支配する。フーフフフ…」

邪心クイーンは、会員に歩み寄りながら、

 「ホーホホホ…、あたしたちの命令をお聞きなさい。」

ピンクの扇を振った。

 「逆らえば、こいつでブスり。ヘーヘヘヘ…」

邪心ジャックが、剣をメガネの男に突き付ける。そして、邪心ジョーカーが言う。

 「命が惜しければ、われらに従え! ハーハハハ…」






と、その時である。

 「待て! 私が相手になろう。」

サーベルを抜き、構えるビッチュマン。 
切りかかる邪心エースを振り払い、邪心キングをはね退ける。
邪心クイーンは蹴飛ばされ、邪心ジャックはつぶされた。

…にらみ合う邪心ジョーカーとビッチュマン。

 「むー…」「んんー…」「んむー…」「んぅー…」

 突然笑う邪心ジョーカー。

 「ハーハハハ…、にらめっことは面白い…。おっと、笑うてしもうた。わしの負けか…。
  まあ、よい。いつか泣かしちゃるけぇのぉ。ハーハハハ…」

笑いながら去って行く邪心ジョーカー。

 「みんなの笑顔を守るためなら、いつでも相手になるぞ。」

ビッチュマンの力強い言葉に、会員は駆け寄り、笑顔で握手をするのだった。



 夢か? 幻か! 今ここに、青経協会員のふるさとを愛する厚き心にふれて
『ビッチュマン』は現われた。




                  words by Y,K